文献; 稲葉俊哉ほか 第81回日本血液学会学術集会 モノソミー7 - どこまでわかったか- 臨床血液2019; 60: 8-14*1
monosomy 7を合併する血液悪性腫瘍他の疾患は恐ろしい予後不良を示すが, 7番染色体にはp53やRunx1のような強力な「守護神」遺伝子はみあたらず, いかにも小物でなにをやっているのかよくわからない遺伝子が局在し, 予後不良の機序としては「不可解」であった.
monosomy7が発見され半世紀がたち, 責任遺伝子追求が進められ, この10年の進歩はめざましく,ついにmonosomy7の分子病態の一端が解明されてきた.
monosomy7の「魑魅魍魎」*1を理解するキーワードは 片アレル欠失による機能不全; ハプロ不全--haploinsufficiencyである
ハプロ不全:
姉妹染色体同士(接合体のもつ一対の遺伝子)のうち一方に変異が起っても, ほとんどの遺伝子では, 通常はもう一方の残った野生型遺伝子からつくられるタンパク質によって不足分を補われることになる.しかし,Notch,Deltaなどの少数の遺伝子においては,野生型遺伝子1つ(ハプロイド)からつくられるタンパク質では量が不足するため, 突然変異と野生型遺伝子のヘテロ接合体で顕性の表現型(機能が不全)がみられる.このような現象をハプロ不全と呼ぶ.
ハプロ不全ではタンパク質の不足・機能不全でも顕性遺伝として伝わることになる(通常は潜性として伝わる)。ハプロ不全遺伝子は, 顕性遺伝子となる.
通常の顕性遺伝ではタンパク質の積極的な異常な振る舞いが異常発現の要因になる[dominant-negative(優性阻害)]が、ハプロ不全突然変異の遺伝子産物が, 正常遺伝子の産物の機能を阻害することはない.
●ハプロ不全では片方のアレルを喪失しただけで(one hit)発がんを促進することになる.
多細胞生物ではゲノム領域欠損や点突然変異は日常茶飯事に起きるためハプロ不全型の発がん抑制遺伝子はp53やRbなど中核的な「守護神」遺伝子を含むことはあり得ない.
(もし強力な守護神遺伝子がハプロ不全型に含まれていたら, ヒトは小児がんで絶滅してしまう)
ハプロ不全型発がん抑制遺伝子はインパクトのちいさな「小物」遺伝子ばかりであり,one hitで発がんに寄与しながら, 寄与度は相対的に小さく, その機能喪失のみでは発がんにいたらない
他の多くの遺伝子異常やエピゲノム異常との協動や, 周辺細胞との相互関係の変化などにより時間をかけて腫瘍を発生させる.
monosomy7の本体は, ハプロ不全型「小物」発がん抑制遺伝子の複数欠落である
臨床所見と遺伝子改変マウスの解析により以下の5遺伝子が有力候補として考えられている.
Samd9, Samd9L(Samd9-like; ligandではない)