#author("2022-09-02T16:46:02+09:00","","")
#author("2026-02-27T20:16:23+09:00","","")
[[Wikipathologica-KDP]]

[[MDSに認められる染色体異常]]

* monosomy 7 [#k4cb0c55]
文献; 稲葉俊哉ほか 第81回日本血液学会学術集会 モノソミー7 - どこまでわかったか-  臨床血液2019; 60: 8-14&note{inaba:第81回日本血液学会学術集会 モノソミー7 - どこまでわかったか- 稲葉俊哉ほか 臨床血液2019; 60: 8-14};

monosomy 7を合併する血液悪性腫瘍他の疾患は恐ろしい予後不良を示すが, 7番染色体にはp53やRunx1のような強力な「守護神」遺伝子はみあたらず, いかにも小物でなにをやっているのかよくわからない遺伝子が局在し, 予後不良の機序としては「不可解」であった.

monosomy7が発見され半世紀がたち, 責任遺伝子追求が進められ, この10年の進歩はめざましく,ついにmonosomy7の分子病態の一端が解明されてきた.



**monosomy7の本体 [#r15c5109]

monosomy7の「魑魅魍魎」&note{inaba:第81回日本血液学会学術集会 モノソミー7 - どこまでわかったか- 稲葉俊哉ほか 臨床血液2019; 60: 8-14};を理解するキーワードは &color(#e2041b){''片アレル欠失による機能不全; ハプロ不全--haploinsufficiencyである''};
#br

>&color(#c9171e){''ハプロ不全:''};&br;
姉妹染色体同士(接合体のもつ一対の遺伝子)のうち一方に変異が起っても, ほとんどの遺伝子では, 通常はもう一方の残った野生型遺伝子からつくられるタンパク質によって不足分を補われることになる. 
>
しかし,''Notch,Delta''などの少数の遺伝子においては,''野生型遺伝子1つ(ハプロイド)からつくられるタンパク質では量が不足するため'', &color(blue){''突然変異と野生型遺伝子のヘテロ接合体で顕性の表現型(機能が不全)がみられる''};.このような現象をハプロ不全と呼ぶ.
>
ハプロ不全ではタンパク質の不足・機能不全でも''顕性遺伝''として伝わることになる(通常は潜性として伝わる)。ハプロ不全遺伝子は, 顕性遺伝子となる.
>
通常の顕性遺伝ではタンパク質の積極的な異常な振る舞いが異常発現の要因になる[dominant-negative(優性阻害)]が、&color(#c9171e){''ハプロ不全突然変異の遺伝子産物が, 正常遺伝子の産物の機能を阻害することはない.''};
#br

>&color(blue){●};ハプロ不全では片方のアレルを喪失しただけで(one hit)発がんを促進することになる.~
多細胞生物ではゲノム領域欠損や点突然変異は日常茶飯事に起きるためハプロ不全型の発がん抑制遺伝子はp53やRbなど中核的な「守護神」遺伝子を含むことはあり得ない.~
(もし強力な守護神遺伝子がハプロ不全型に含まれていたら, ヒトは小児がんで絶滅してしまう)

>''ハプロ不全型発がん抑制遺伝子''は&color(blue){インパクトのちいさな「小物」遺伝子ばかり};であり,one hitで発がんに寄与しながら, &color(blue){寄与度は相対的に小さく, その機能喪失のみでは発がんにいたらない};~
>
''他の多くの遺伝子異常やエピゲノム異常との協動や, 周辺細胞との相互関係の変化などにより時間をかけて腫瘍を発生させる.''
#br
&color(red){''monosomy7の本体は, ハプロ不全型「小物」発がん抑制遺伝子の複数欠落である''};
#br

**monosomy7の責任遺伝子--現時点2019での有力候補5遺伝子 [#c7ec2d5a]

#ref(monosomy7genes.jpg,around,right,80%)

臨床所見と遺伝子改変マウスの解析により以下の5遺伝子が有力候補として考えられている.

-''1,2. '''Samd9'''と'''Samd9-like(Samd9L)'''''

-''3.'''Ezh2'''''

-''4. '''MLL3'''''

-''5. '''CUX1'''''
#br
#br

'''''Samd9, Samd9L'''''''(Samd9-like; ligandではない)''

-両遺伝子は7番染色体が正常にみえるJMMLや類縁疾患でマイクロアレイCGH法で解析して得られた7q21.2サブバンド上の微小欠失領域から隣接する遺伝子として単離された. &note{:Asou H, et al. Identification of a common microdeletion cluster in 7q21.3 subband among patients with myeloid leukemia and myelodysplastic syndrome.Biochem Biophys Res Commun. 2009 May 29;383(2):245-51. PMID:19358830};

-60%のアミノ酸相同性をもつエンドソームタンパク質をコードする.

-脊椎動物にのみ存在し, 哺乳類ではSamd9とSamd9Lの両方をもつグループ(ヒトなど), Samd9Lのみをもつグループ(マウスなど), Samd9のみをもつグループ(ウシなど)に分かれるといわれている.

-2つの遺伝子は上記のように非常に特異的な遺伝子分布を示し両遺伝子産物の機能が相補的であることを示している.

-Samd9Lのホモ, ヘテロ欠失マウスでは正常な誕生と発育を示すが生後1年半ころ(ヒトの40-50歳に相当する)から典型的なMDSを発症, 貧血などで死亡する.&br;
ヘテロ欠失マウスのMDS細胞にはSamd9L発現が維持されており, ハプロ不全による発がん促進のメカニズムを示唆している.

-Samd9/9Lの機能はエンドゾームの融合促進である.マウスでのSamd9L減少はエンドソームからライソソームへの移行を阻害し, リガンド結合後のサイトカイン受容体の代謝が遅延する&br;
この遅延はサイトカインシグナルを増強させ, 造血前駆細胞の骨髄再構築能やコロニー形成能を亢進させる.

-Samd9/9L遺伝子欠失によるサイトカインシグナル増強は小児例のモノソミー7クローンの特徴をうまく説明することができる.

*** -7/ 7q-の染色体異常 [#cb301c79]

-Monosomy7/ 7q- は, trisomy8についで骨髄系腫瘍に多い染色体異常. Momosomy7のAMLは小児に多い.

-7q-は, -5/ 5q-や-17などの付加的異常を伴っていることが多い.

-アルキル化剤をもちいる化学療法や, 放射線療法の既往をもつ患者さんに認められることが多く, 予後不良の染色体異常である.

-CMLでTKI(チロシンキナーゼ阻害剤)が奏功したあと, Ph陰性細胞が種々の染色体異常を持つことがあり, 多くは一時的細胞増殖で終わるが, -7/ 7q-を持つ場合は化学療法が必要になる.
-CMLでTKI(チロシンキナーゼ阻害剤)が奏功したあと, &color(#e2041b){''Ph陰性細胞が種々の染色体異常を持つことがあり, 多くは一時的細胞増殖で終わるが, -7/ 7q-を持つ場合は化学療法が必要になる.''};

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