Wikipathologica-KDP
3q27 悪性リンパ腫他におけるbcl-6の転座†
Bcl6(B-cell lymphoma 6)†
bcl6; ヒト胚中心由来びまん性大細胞リンパ腫(DLBCL)の染色体転座部位(3q27)から単離された癌遺伝子*1*2
- 胸腺細胞, 脾臓B細胞, T細胞をはじめほとんどの細胞において発現が認められる。とくに胚中心B細胞において発現が強くみとめられる。*3*4
- よく保存された遺伝子であり, ヒトとマウスではアミノ酸レベルで95%が相同、各臓器や細胞における発現パターンも同じであった。
- Bcl6タンパク質はC末端にKruppelタイプのZincフィンガーモチーフが6個ならび, ここで特異的DNA配列と結合する。
- N末端にはタンパク質-タンパク質結合に関与するといわれるBTBあるいはPOZドメインと呼ばれる領域がある。
- Bcl6は標的遺伝子の転写を負に制御するリプレッサーとして機能する。
- 標的遺伝子の転写活性抑制はBTB/POZドメイン領域においてhiston deacethylase1(HDAC1)を含む複合体と結合することによりHDAC1を染色体上にリクルートして、染色体のクロマチンヒストンを脱アセチル化することによっておこる。-->ヒストンをアセチル化のページを見る。
- Bcl6がB細胞内で転写制御している標的遺伝子*5
- Bcl6欠損B細胞は胚中心を形成できない. 脾臓においてIgMとIgG1記憶B細胞に分化するが骨髄の長期生存IgG1産生細胞へ分化することはない。このB細胞にはV重鎖遺伝子変異はまったくみられない.
- Bcl6と胚中心形成はIg hypermutation 体細胞変異には必須である。
- 記憶B細胞の分化は胚中心形成, 体細胞変異, Igクラススイッチには依存することなくおこる。*6
NHL (non Hodgkin lymphomas)における 3q27 rearrangements†
- BCL6を切断する染色体転座は diffuse large B-cell lymphomas (DLBCL)の40%, follicular lymphomas (FL)の5-10%, さらに nodular lymphocyte predominant Hodgkin lymphomas(NLPHL)の50%に認められる.*7
- BCL6 protooncogeneの自己調節領域突然変異は, BCL6の構成的発現をきたし, びまん性大細胞型B細胞リンパ腫において, 負のBCL6の自己調節を破壊していると考えられる.*8
- 3q27 再構成/異常はtranslocations, micro-deletions, point mutations および hypermutationを含む.
- 3q27転座の約半数は 免疫グロブリン遺伝子 14q32 (IgH)[t(3;14)(q27;q32)], 2p12 (IgK) and 22q12 (IgL)が転座相手になる.
- 約40%では 種々な遺伝子が転座相手になる. (1q21, 2q21, 4p11, 5q31, 6p21, 7p12, 8q24, 9p13, 11q13, 11q23, 12q11, 13q14-21, 14q11, 15q21; 16p11...). 加えて,しばしば 両アレルの異常を呈する. 非転座アレルの転座, 欠失, 変異が認められる.
- BCL6と種々の転座パートナー間のプロモーター置換後にハイブリッド遺伝子および転写物が形成される。一般に, 正常のBCL6 exon2スプライスアクセプター部位に融合遺伝子パートナーの5'部分を含むキメラ転写物が検出される。
- 症例によっては, パートナー遺伝子コード領域にBCL6の5'調節領域が融合し, 相反的(reciprocal)キメラ転写物が駆動されることが特徴となっている.
- 一般にBCL6高発現の腫瘍は予後がよいとされる. その発現が増加する機序は重要ではないようである(すなわち、その発現を増加させる転座パートナーが違っていても、予後は同じになる)
- 転座による, fusion蛋白は産生されない.
主なBcl6転座とそのパートナー遺伝子
- t(1;3)(q25;q27) the gene in 1q25 is GAS5
- t(2;3)(p12;q27) the gene in 2p12 is IGK
- t(3;3)(q25;q27) the gene in 3q25 is MBNL1
- t(3;3)(q27;q27) the gene in 3q27 is ST6GAL1
- t(3;3)(q27;q27) the gene in 3q27 is EIF4A2
- t(3;3)(q27;q29) the gene in 3q29 is TFRC
- t(3;4)(q27;p13) the gene in 4p13 is RHOH
- t(3;6)(q27;p22) the gene in 6p22 is HIST1H4I
- t(3;6)(q27;p21) the gene in 6p21 is PIM1
- t(3;6)(q27;p21) the gene in 6p21 is SFRS3
- t(3;6)(q27;q15) the gene in 6q15 is SNHG5
- t(3;7)(q27;p12) the gene in 7p12 is IKZF1
- t(3;7)(q27;q32) the gene in 7q32 is FRA7H
- t(3;8)(q27;q24.1) the gene in 8q24.1 is MYC
- t(3;9)(q27;p24) the gene in 9p24 is DMRT1
- t(3;9)(q27;p11) the gene in 9p11 is GRHPR
- t(3;11)(q27;q23) the gene in 11q23 is POU2AF1
- t(3;12)(q27;p13) the gene in 12p13 is GAPDH
- t(3;12)(q27;q12) the gene in 12q12 is LRMP
- t(3;13)(q27;q14) the gene in 13q14 is LCP1
- t(3;14)(q27;q32) the gene in 14q32 is IGH
- t(3;14)(q27;q32) the gene in 14q32 is HSP90AA1
- t(3;16)(q27;p13) the gene in 16p13 is CIITA
- t(3;16)(q27;p11) the gene in 16p11 is IL21R
- t(3;19)(q27;q13) the gene in 19q13 is NAPA
- t(3;22)(q27;q11) the gene in 22q11 is IGL